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2025.12.20 Event(report)

(2025.12.20)『(2025年度輪読会)プログラム評価~対人・コミュニティ援助の質を高めるために~』の第9回を開催いたしました。

2025年12月20日(土)18:00より、2025年度輪読会の第9回(最終回)を開催しました。今回の範囲は《第5部》「評価実践の報告とスタンダード」の(5-1)「評価報告書」から(5-2)「評価スタンダード」までで、報告資料は巣立氏(山村学園短期大学)が作成し、報告は大山早紀子氏(川崎医療福祉大学/PBEE研究・研修センター事務局)が担当しました。年度末の多忙な時期の開催となりましたが、少人数での対話を中心に、評価報告の実務とスタンダードの意味づけを確認しました。

5-1 評価報告書:誰に伝えるのかで書き方は変わる
(5-1)では、評価実施後に作成するテクニカルレポート(技術報告書)の考え方が整理されました。議論の中心となったのは、「誰が読むのか」を想定することです。大山氏からは、学術論文が「広く結果を示す」ことに重心があるのに対し、テクニカルレポートは意思決定者や現場のニーズに沿って書く必要がある点が説明されました。
また、分厚い報告書は読み切れないことが多いという現実を踏まえ、主要結果と価値判断を簡潔にまとめるエグゼクティブレポートの位置づけも共有されました。ここでは「どれくらいの分量が適切か」「専門用語をどこまで避けるべきか」が話題となり、評価の専門用語を完全に排除するよりも、解説を添えつつ用語を使い、評価文化を育てていくという考え方が示されました。一方で、評価報告書は評価報告書として必要情報(手続きや根拠)を欠かさずに書き、一般向けの動画や広報資料は別に作るべきだ、という整理も共有されました。
さらに、参加者からは行政等の公開資料が「分量が多く、用語も難解で読み手が置き去りになる」実感が示され、事業報告と評価報告が混在すると読み手が「何をもって評価しているのか」をつかみにくい、という点も確認されました。

5-2 評価スタンダード:価値判断の偏り、基準同士の衝突、実用性の捉え方
(5-2)では、評価は価値判断を含むため、評価者の主観や価値観が結果に影響し得ること、そのためにスタンダード(基準)やガイドラインが必要であることが提示されました。ここでまず議論になったのは、「スタンダードは“価値判断の偏りをなくす”ためのものなのか」という点です。正確性(信頼性・妥当性)の観点では一定の収斂が期待できる一方、実用性・実現可能性・正当性(倫理)といった基準は、必ずしも科学性の最大化と同方向に働くとは限らず、むしろ評価設計を制約することで評価結果の“見え方”に影響し得る、という問題意識が共有されました。さらに、基準同士が衝突する可能性(例:倫理配慮と厳格なデザインの両立)に本文が十分触れていない点も論点になりました。
実用性の基準をめぐっては、テキストにある「付加価値・社会的価値の査定と報告が重要」という記述が、良いところ探しを誘発しないか、という懸念が示されました。つまり、評価は「有用性が示されなかった」こと自体が重要な知見となり得るのに、実用性を“価値があると示すこと”と結びつけてしまうと本末転倒になりかねない、という指摘です。また実用性の文脈では、結果の内容だけでなく、評価結果を返す時期・タイミングや、利用者・意思決定者とのコミュニケーションの設計も重要ではないか、という観点も共有されました。
正当性(倫理)に関しては、インフォームド・コンセントや倫理面の配慮の重要性自体は確認しつつも、実務では倫理審査を受ける機会や時間的猶予が乏しいことが多く、現実にどうすべきかが課題として浮上しました。加えて、勧告(recommendation)やアクションプランの提示を強調する場合、不確実な情報に基づく提言が倫理的に問題になり得るのではないか、という指摘も出されました。
また、基準同士が衝突する可能性(例:倫理的配慮と厳格な実験デザインの両立の困難)に本文が十分触れていない点も議論の俎上に上がりました。併せて、実用性の基準に関するテキストの記述(付加価値・社会的価値の査定を実用性と結びつける表現)については、「有用性が示されなかった」こと自体が重要な評価結果になり得るという観点から、良いところ探しに誘導される表現にならないか、という懸念が共有されました。実用性は結果の内容だけでなく、返すタイミングや、利用者とのコミュニケーションといった要素とも結びつくのではないか、という論点も示されました。

最終回となる第9回は、評価の「実施」から一歩進んで、評価をどう伝えるか(報告)、そしてどのように正当化し質を担保するか(スタンダード)を扱いました。議論では、読み手に届く形に整える工夫と、評価報告書としての必要情報を欠かさないことの両立、さらにスタンダードを「偏りをなくす道具」と単純化せず、基準間の衝突や実用性の多面性を踏まえて捉える必要性が共有されました。今年度の輪読会の締めくくりとして、評価の技術だけでなく、評価を社会に実装していくための言語化・合意形成・説明責任の難しさが改めて確認される回となりました。

文責:新藤健太(PBEE研究・研修センター・業務執行理事)

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