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2025.08.23 Event(report) Information

(2025.8.23)『(2025年度輪読会)プログラム評価~対人・コミュニティ援助の質を高めるために~』の第5回を開催いたしました。

2025年8月30日(土)、PBEE研究・研修センター主催「プログラム評価の理論と方法」輪読会2025年度の第5回が開催されました。今回の範囲は《第2部》(2-6)「インパクト理論」から(2-8)「評価可能性アセスメント」までで、報告は福島県でスクールソーシャルワーカーとして活動されている原田由香様にご担当いただき、当日は12名の方にご参加いただきました。

最初に取り上げられた「インパクト理論」では、プログラムの効果が「なぜ」生じるのかという因果メカニズムを明らかにすることの重要性が説明されました。テキストには「実験法や準実験法のような厳密な方法を現場にそのまま適用するのが難しいという評価方法の限界ゆえにインパクト理論がある」と記されていましたが、輪読会では、インパクト理論は評価方法の限界を補完するものではない、という点が確認されました。スクールカウンセリングの事例については、主語やアウトプットが不明確で成果が漠然としていることが指摘され、アウトプットを起点に近位・遠位のアウトカムを整理し、測定可能な形で示す必要があるとの意見が出されました。また、インパクト理論の図表で「アクション仮説」「概念仮説」といった用語の用い方が分かりづらく、ロッシの原典にはない表現であることも議論となりました。

続いて「ロジックモデル」が検討されました。ロジックモデルは、インプット、アクティビティ、アウトプット、アウトカムといった要素の連鎖を仮説的に描く手法です。ここで大きな論点となったのは「インパクト」という用語の扱いでした。テキストのロジックモデルではアウトカムの先に「インパクト」を置いていますが、この点に違和感があるとの指摘がありました。プログラム評価の文脈では、インパクトは通常「純効果(net effect)」を意味するため、ロジックモデルの成果段を「インパクト」とするのは混乱を招くという意見です。一般的にはアウトカムを段階的に整理し(短期・中期・長期、あるいは直接・中間・最終など)、その延長を「インパクト」と呼ぶことは適切でないとの議論が共有されました。また、国際協力のDAC評価基準などで「インパクト」が最終的・社会的な変化や波及効果の意味で用いられてきた経緯も紹介され、文脈ごとの使い分けが不可欠であるとの認識が確認されました。さらに、体験型学習プログラムの循環型モデルにおいて「学びのコミュニティ」という表現が抽象的であることも議論され、具体的な活動サイクルや成果との対応を明確にすべきだとの意見が出されました。

最後に「評価可能性アセスメント」が紹介されました。これは、評価を始める前にその実現可能性や有用性を確認するための段階で、目的やゴールの明確さ、介入手順の整合性、データの入手可能性、評価目的や同意の有無といった要素が確認されます。ただ、評価可能性アセスメントの観点の一つとして「活動が参加者に行き届いているか」という点が挙げられていましたが、これは本来プロセス評価に属するのではないかとの指摘がありました。議論では、評価可能性アセスメントの本質は、ステークホルダーとの合意形成やロジックモデルの妥当性確認を経て評価設計に進むことであり、活動の実施状況そのものを検証する段階とは切り分けるべきであると整理されました。また、ステークホルダーは資金提供者に限らず、現場の実践者や利用者、地域社会を広く含む必要があるとの認識も共有されました。

今回の輪読会では、インパクト理論が評価方法の「補完」として描かれるべきではないことロジックモデルにおけるインパクトの表記が混乱を招くこと、そして評価可能性アセスメントの射程をどう捉えるかといった点が、テキストを批判的に読む中で明らかになりました。報告者からは、主語や指標を明確にしないままでは学びが漠然としたものになる、との感想が示され、参加者全員でテキストの読み方を深める場となりました。
次回第6回は9月27日(土)、《第2部》(2-9)「評価デザイン」から(2-10)「実験・準実験デザイン」を予定しています。「(2025年度輪読会)プログラム評価~対人・コミュニティ援助の質を高めるために~」について、ご関心のある方はどの時期からでもご参加いただくことが可能ですので、是非ご参加ください!その際はこちらのPeatixサイトから参加のお申込みをお願いします。
賛同会員の皆様には輪読会の動画配信サービスも行いますので、宜しければこちらから賛同会員にお申込みいただき、本輪読会には「賛同会員」として参加していただけましたら幸いです。

文責:新藤健太(PBEE研究・研修センター・業務執行理事)

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